1. はじめに|なぜ今「直列5気筒エンジン」を語るのか?
エンジンの形式って、意外と奥が深いんです。
車のスペック表でよく見かける「直列4気筒」や「V6エンジン」といった表記。ですが、その中にあまり見かけない存在があります。それが“直列5気筒エンジン”です。
実はこの5気筒エンジン、かつて多くのメーカーが採用していた優れた仕組みを持つエンジンなんです。振動が少なく、燃焼効率も良好。トルクの出方もスムーズで、何より独特なエンジンサウンドが魅力的。にもかかわらず、今ではほとんど姿を消してしまいました。
「え?そんな良いエンジンがなんでなくなったの?」
そう思った方は、まさにこの記事のターゲットです。
このページでは、直列5気筒エンジンの構造や仕組み、メリット・デメリット、そしてなぜ減ってしまったのかを、わかりやすく解説していきます。クルマ好きな方はもちろん、「エンジン形式ってなんとなくでしか見てなかったな…」という人でも、読めばきっと一歩車通になれるはず。
そして、今なお5気筒を採用し続けるアウディがなぜそこにこだわるのか、その理由にも迫っていきます。
ちょっとマニアック。でも知ればきっと好きになる。そんな直列5気筒エンジンの世界を、一緒に覗いてみましょう。
2. 直列5気筒エンジンとは?|構造と特性をやさしく解説
直列5気筒エンジンとは、その名のとおり5つのシリンダーが一直線に並んだエンジンのことです。よくある直列4気筒と、かつての高級車に多かった直列6気筒のちょうど“中間”にあたる存在なんです。
◾️1気筒あたりの排気量バランスが絶妙!
ガソリンエンジンでは、1気筒あたりの理想的な排気量は400cc~600ccとされています。これより小さいと燃焼効率が悪くなり、大きすぎるとノッキングなどのトラブルが増えてきます。
その点、直列5気筒の2500ccエンジンなら1気筒あたり500cc。これはまさに理想的なバランス。効率良く力を出せるので、燃費とトルクの両立がしやすいんです。
◾️燃焼順序は“1-2-4-5-3”で144度間隔
エンジンの回転(4サイクル720度)を5つで割ると、1回の燃焼ごとに144度で次の気筒が爆発する計算になります。
つまり、回転中に常にどこかのシリンダーが燃焼しているため、非常になめらかな回転フィールを実現できるというわけです。
◾️振動が少ない!でも“ねじれ”がある?
5気筒エンジンは、1次振動・2次振動を打ち消し合う構造なので、4気筒よりも圧倒的にスムーズです。
ですが…ちょっとやっかいなのが「慣性偶力」と呼ばれる“ひねるような揺れ”。これは奇数気筒特有の問題で、エンジンがシーソーのように左右に揺れようとします。
その対策として多くの5気筒エンジンにはバランスシャフトが組み込まれており、これが振動を打ち消してくれています。
◾️直列6気筒よりも短いけど…搭載に難あり?
5気筒エンジンは構造的に「直列6気筒よりは短い」ですが、それでもV型6気筒よりは長いんです。
そのため、エンジンルームが広くない車では搭載しづらく、特に横置き(FF)で使うには苦労する場面も多いんです。

このように、直列5気筒エンジンは効率・振動・コストの面でバランスが良い構造を持っていますが、いくつかの「クセ」もあるのが特徴です。
3. 直列5気筒エンジンのメリット
直列5気筒エンジンって、実は“良いとこ取り”のエンジンだったんです。直4よりなめらかで、直6よりコンパクト。その中でも特に注目したいメリットを3つに絞って紹介します。
✅① トルク変動がほぼゼロ!スムーズな加速感
エンジンは気筒ごとに「吸気・圧縮・燃焼・排気」を繰り返して動いていますが、4気筒ではどうしてもトルクの波が出てしまいます。
ところが5気筒では、720度のクランク回転を144度ずつ等間隔で燃焼させることにより、1次から4次までのトルク変動が打ち消し合うように設計されています。
つまり、直列6気筒にも匹敵するほどスムーズな回転フィールを味わえるんです!
✅② 燃焼効率が高い|理想的な1気筒500cc
先ほども触れましたが、ガソリンエンジンで効率が良いとされる排気量は1気筒400~600ccの間。
直列5気筒エンジンの多くは、2000〜2500cc台が主流。つまり、1気筒あたり500cc前後となり、理論上もっとも効率よく燃焼できる理想形なんです。
結果として、出力もトルクも燃費もバランス良く取れる、非常に優秀な設計になっていました。
✅③ 製造コストが安い!V6よりシンプル
エンジンは気筒数が増えるほど複雑になります。
例えばV型6気筒だと、左右2つのシリンダーヘッドが必要になるため、カムシャフトやチェーン周りの部品数が倍に。設計も製造もコストアップです。
その点、直列5気筒は1本のシリンダーヘッドで済むので構造がシンプル!
特に、既存の直列4気筒をベースにして**「1気筒足すだけ」で作れる**という利点もあります(アウディの例が有名ですね)。
結果として、高性能ながらコストを抑えて量産できるという、メーカーにとっても嬉しい存在だったわけです。

このように、性能・効率・コストの3拍子が揃った直列5気筒エンジンですが、なぜ今ではあまり見かけなくなったのでしょうか?
4. デメリットと消滅の理由
直列5気筒エンジンは“いいことずくめ”に見えるかもしれませんが、残念ながら完璧ではありません。だからこそ今では珍しい存在になってしまいました。ここでは、その代表的なデメリットと、それがなぜ“消滅”につながったのかを解説します。
❌① 排気干渉が起きやすい
5気筒エンジンは、燃焼タイミングの都合で排気行程が重なりやすく、排気干渉が起こりがちです。
これはエキゾーストマニホールドの設計次第である程度緩和できますが、完璧に解決するのは難しく、排気効率が落ちる原因になります。
ただし、この排気干渉が生み出す独特の不規則なサウンドを「官能的」と評価するファンも多く、アウディなどではむしろ“魅力”として残されています。
❌② バランスシャフトが必要=出力ロス
5気筒エンジンは奇数気筒ゆえに、**エンジンがねじれるように揺れる「慣性偶力」**がどうしても発生してしまいます。
これを抑えるためにはバランスシャフトの搭載が不可欠ですが、このシャフトはエンジンパワーを一部使って回転させるため、燃費や出力のロスに直結します。
つまり、静粛性や快適性のためにパフォーマンスを犠牲にせざるを得ないわけですね。
❌③ エンジン全長が長く、車に積みにくい
5気筒エンジンは直列6気筒より短いとはいえ、V6よりはかなり長いです。
この「長さ」がネックで、特に横置き(FF)エンジンではスペースが足りなくなることが多く、ホイールハウスやクラッシャブルゾーンとの干渉も問題になります。
その結果、車体設計の自由度が下がる=車種が限定されるという形で、徐々に採用されなくなっていきました。
❌④ 現代の技術進化で“中途半端な存在”に
かつては「4気筒より上、6気筒よりは手軽」というちょうどいい立ち位置だった5気筒ですが、現代の技術進化によりそのバランスが崩れました。
- 可変バルブタイミング
- ターボチャージャーの進化
- ハイブリッド技術の導入
- 高圧燃料直噴(DI)など…
これらによって4気筒でもパワーやトルクは十分出せるようになり、5気筒の「中間的な魅力」は不要なものと見なされていったのです。
🔚結果:合理性を重視したメーカーは採用しなくなった
車のエンジンは、燃費・性能・コスト・搭載性・排ガス規制対応といったさまざまな要素のバランスで選ばれます。
その中で5気筒エンジンは「魅力はあるけど、そこまでして使う理由がない」とされ、徐々にV6や高性能4気筒に置き換えられていったというのが現実です。

ですが、「じゃあ本当に5気筒は完全に消えたのか?」というと、実は…今でもこだわって使い続けているメーカーがあるんです。
次はそんな“こだわり派”の歴史を振り返ってみましょう。
5. どの車が採用していた?歴史を振り返る
直列5気筒エンジンは今でこそ“絶滅危惧種”のような存在ですが、かつては多くのメーカーが採用し、名車たちに搭載されていた時代がありました。ここでは、そんな5気筒エンジンの歴史と代表的な採用例を見ていきましょう。
✅アウディ|世界初の量産5気筒エンジン搭載メーカー
1976年、アウディは「アウディ100」にて世界で初めて直列5気筒エンジンを乗用車に量産採用しました。
さらに1980年代には、WRC(世界ラリー選手権)で活躍した名車アウディ・クワトロにも搭載され、その耐久性とトルク性能、独特のエキゾーストノートで**“アウディ=5気筒”のイメージ**を決定づけました。
その後一時ラインナップから姿を消すも、2009年のTTRSで復活。現在はRS3やRS Q3などの高性能モデルに搭載され続けており、まさに“5気筒最後の砦”と言える存在です。
✅ホンダ|縦置き5気筒という異色の挑戦
1990年代のホンダは、「アコードインスパイア」や「ビガー」といった車に5気筒エンジンを採用。
FF車でありながら縦置きでエンジンを配置し、ミッドシップに近い重量バランスを実現するという、他にはないパッケージングが特徴でした。技術的に面白い試みでしたが、搭載スペースの課題と時代の流れで短命に終わったのが残念です。
✅トヨタ|意外にも採用は1機種のみ
トヨタが5気筒エンジンを採用したのは、ランドクルーザー70系の1PZ型ディーゼルエンジンのみ。
パワーよりもトルク重視のディーゼルユニットにおいて、5気筒は「直6ほど長くならず、直4より滑らか」という利点を活かせる構成でした。ただし乗用車向けには一度も採用されていません。
✅ボルボ|“横置き5気筒”の代表格
ボルボも5気筒エンジンを積極的に使っていたメーカーの一つ。
1991年の「850」から始まり、「V70」「S60」「C30」など、多くのモデルに横置きの5気筒ターボエンジンが搭載されました。信頼性と静粛性のバランスが評価され、北欧の堅実な高性能車として一定の人気を得ていました。
しかし、近年のダウンサイジング化の波により、現在では全車種が2.0Lの直列4気筒に統一されています。
✅その他メーカーの採用事例
- メルセデス・ベンツ:主にディーゼル車で5気筒エンジンを使用
- フィアット/アルファロメオ:小型FF車やスポーツセダンに搭載
- フォルクスワーゲン:VR5(直列とV型のハイブリッド構造)として存在
- GM/ランチア/ルノー/ランドローバー:主に商用車や一部SUVで採用
🔚徐々に姿を消し、現在はアウディのみが継続
2000年代以降、5気筒エンジンの採用は急速に減少。ボルボやホンダが撤退し、現在ではアウディRS3とRS Q3のみがその伝統を守る存在となっています。

それでも、“エンジンで個性を出す”時代が終わりつつある今、直列5気筒エンジンのサウンドや味わいは逆に新鮮に感じられるかもしれません。
6. 現在唯一の採用例|アウディRS3とRS Q3
2020年代の今、直列5気筒エンジンを新車で体験できるのは、アウディのみと言っても過言ではありません。その代表的な存在が「RS3」と「RS Q3」。この2台は、5気筒エンジンの最後の灯火とも言えるモデルです。
✅アウディが5気筒にこだわり続ける理由
アウディにとって、5気筒エンジンはただのエンジンではありません。
1970年代のアウディ100に始まり、WRCでの輝かしい実績を支えた「伝統の心臓部」だからです。
現行RS3やRS Q3に搭載されるのは、2.5L直列5気筒ターボエンジン。
最高出力400馬力、最大トルク500Nmを発揮するこのユニットは、世界的にも高く評価されているパワーユニットで、”International Engine of the Year”も何度も受賞しています。
✅このエンジン、何がすごいの?
- 0-100km/h加速わずか約3.8秒の俊足
- 軽量コンパクトなボディとのバランスで極めて鋭いハンドリング
- 独特で不規則な5気筒サウンドがドライバーの感情を揺さぶる
このサウンドは、単なる爆音ではなく、低音が響くような「五拍子」のリズムが特徴。
4気筒やV6では味わえない、アウディだけの“エモーショナルな音”が体験できます。
✅なぜ他メーカーはやめたのに、アウディだけが続けている?
理由は単純。アウディのブランドイメージと完璧に一致しているからです。
- 他と違うことに価値を見出す姿勢
- 技術志向でエンジンに「物語性」を求める
- WRC時代のファンからの根強い支持
加えて、モジュラー設計を上手く活用し、コストを抑えながら継続できているのも大きな理由です。
✅今こそ5気筒を味わうラストチャンス?
電動化が進む現代、純エンジン車の新型モデルはどんどん減っています。
そんな中で、アウディRS3/RQ3の5気筒エンジンは、内燃機関の“最後の花”とも言える存在。
「ただ速いだけじゃない、エモーショナルな車を楽しみたい」
そんな方にこそ、ぜひ一度味わってほしいエンジンです。
7. まとめ|消えたけど忘れられない「5気筒エンジン」の存在
直列5気筒エンジンは、まさに「知る人ぞ知る名エンジン」でした。
トルク変動の少なさ、理想的な燃焼バランス、そして独特のサウンド。そのどれもが、数字だけでは語れない“味わい”を持った存在です。
たしかに、現代のエンジン技術の進化により、4気筒でも十分な性能が得られるようになり、V6やハイブリッドとの住み分けも進みました。
その結果、5気筒は「中途半端」とされ、多くのメーカーが手放していきました。
でも、それでもアウディは今なおこの形式を愛し、RSシリーズという“特別な場所”で命をつなぎ続けているんです。
🔥 消えたからこそ、価値がある。
エンジンに個性が求められた時代。
メカニズムとドライバーの感覚が、より深く結びついていた時代。
直列5気筒エンジンは、その時代の記憶を現代に伝える“語り部”のような存在です。
きっと、もうすぐ完全に新車では見られなくなるかもしれません。
だからこそ今、このエンジンの存在を知っている人だけが味わえる魅力があると思いませんか?
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よくある質問
- Q直列5気筒エンジンって今でも買えるの?
- A
はい、買えます!
ただし、現在新車で直列5気筒エンジンを搭載しているのはアウディのRS3とRS Q3のみです。これらは高性能モデルに分類されるため、価格帯もそれなりに高めですが、今なお5気筒サウンドを楽しめる貴重な存在です。
- Qなぜ6気筒ではなく、5気筒が選ばれることがあったの?
- A
理由はバランスです。
排気量やコスト、燃焼効率、サイズ感のバランスを取ると「5気筒がちょうどいい」という結論に至ることが多かったんです。特に2.0〜2.5Lクラスでは、1気筒あたり500ccという理想的な設計が可能で、エンジニアにとって魅力的な構成でした。
- Q独特なサウンドは魅力?それともデメリット?
- A
完全に“好み”ですが、**多くの車好きにとっては「たまらない魅力」**と感じられています。
直列5気筒は不規則な燃焼音から、独自のビート感あるエキゾーストノートを生み出します。
「耳が記憶するエンジン」とも言われ、4気筒やV6とは違う、ちょっとクセのある鼓動が好きな人にはたまりません。






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