はじめに
ここ数年、ハイブリッド車は日本の新車販売の主力になりました。日本自動車工業会のデータによると、2024年時点で乗用車販売のうち約6割(61.1%)をハイブリッド車が占めています。プリウスをはじめ、ヤリスやフィット、ノートなど、多くの車種がハイブリッド化されているのはもう珍しくありませんよね。
一方で、「燃費が良い」と言われるもう一つの存在――それがディーゼル車です。低回転から力強いトルクを発揮し、長距離でも安定した燃費性能を持つディーゼルエンジン。そんな“燃費の良い同士”であるディーゼルとハイブリッドを組み合わせれば、理想の省エネカーができるのでは?と思う方も多いかもしれません。
しかし現実には、ディーゼルハイブリッド車はほとんど市場に存在していません。現在、国産車でこの仕組みを採用しているのはマツダCX-60とCX-80のみ。海外でもメルセデスやBMWなどの一部高級車に限定されています。
では、なぜこの“夢の組み合わせ”が普及しなかったのでしょうか? この記事では、ディーゼルハイブリッドが広まらなかった理由を「技術的な特性」「コスト」「採用事例」の観点からわかりやすく解説し、今後の動向についても考察します。車好きの方はもちろん、ハイブリッド車の次の選択肢を知りたい方にも役立つ内容になっています。
第1章:ハイブリッド車の現状とディーゼルの立ち位置
まずは、現在のハイブリッド車とディーゼル車の位置づけを整理してみましょう。 日本では、トヨタやホンダを中心にハイブリッド技術が急速に進化し、今や街中でもガソリン車よりハイブリッド車を見る機会のほうが多くなっています。特にトヨタの「ハイブリッドシナジードライブ」や日産の「e-POWER」は、低燃費と静粛性の両立を実現し、多くのユーザーから支持を集めています。
一方、ディーゼルエンジンは高トルクと燃費性能の良さが最大の魅力。 特にマツダやBMWのクリーンディーゼルは「ガソリン車より力強く、長距離でも燃費が落ちにくい」と高評価を得ています。 しかし、排気ガス規制の強化やメンテナンスコストの高さから、販売台数は年々減少傾向にあります。
それでも、ディーゼルエンジンは低回転から最大トルクを発揮できるという点で、発進や登坂など力が必要な場面に強いのが特徴です。 この“力強さ”と、ハイブリッドの“電動アシスト”を組み合わせれば、理論的には「燃費も走りも最強の車」が作れるように思えますよね。
実際、2010年代にはトヨタや日産をはじめ複数のメーカーがディーゼルハイブリッドの開発を検討しました。しかし、量産に至ったモデルはほとんどありません。

そこには、技術的な壁だけでなく、「コスト」「重量」「スペース」といった構造的な課題が潜んでいるのです。
第2章:ディーゼルハイブリッドが普及しなかった2つの主要な理由
ディーゼルハイブリッドが広く普及しなかった背景には、大きく分けて2つの理由があります。 ひとつは「ディーゼルエンジンとモーターの特性が似ている」こと。 もうひとつは「コストや構造面でのデメリットが大きすぎる」ことです。
理由①:ディーゼルとモーターの特性が重なる
まず注目したいのが、両者の得意分野がかぶっているという点です。 ディーゼルエンジンは低回転域で大きなトルクを発揮し、高速よりも発進や登坂に強い特性を持ちます。 一方で、モーターもまた発進直後から最大トルクを出せるという同じ性格を持っています。
つまり、ガソリンエンジン+モーターのような「苦手分野を補い合う関係」ではなく、 ディーゼル+モーターの場合は「得意分野が重なり合ってしまう関係」になってしまうのです。 そのため、ユーザーが“ハイブリッド化による走りの違い”を実感しづらく、メーカーとしても開発コストをかけるメリットが薄くなってしまいます。
たとえばマツダの2.2Lディーゼル(CX-5など搭載)は、わずか2,000回転で最大トルクを発揮します。 この特性にモーターのアシストを加えても、体感的な差はそれほど大きくなく、 「走りの滑らかさ」や「発進の軽快さ」というハイブリッド特有のメリットが出にくいのです。
理由②:コスト・重量・スペースの壁
もうひとつの大きな壁は、構造的なコストとスペースの問題です。 ディーゼルエンジンはもともと排ガス規制をクリアするために高価な装置を多数搭載しています。 たとえば、コモンレールシステム・DPF(ディーゼル微粒子フィルター)・尿素SCRシステムなどですね。 これにハイブリッド用のバッテリーやモーターを組み合わせると、部品点数も重量も一気に増加します。
結果として、車両価格はガソリンハイブリッドより50万円〜100万円ほど高額になるケースも。 また、これらのシステムを収めるためのスペースも必要となり、 特にボディの小さいCセグメント以下の車では物理的に搭載が難しいという課題もあります。
さらに、ハイブリッド化によって車両重量が増えると、積載量や燃費にも影響が出ます。 特にトラックなどの商用車では「重量増によって運べる荷物が減る=仕事効率が下がる」ため、 企業としても採用をためらう要因になっています。

これらの理由から、メーカーは「ディーゼル×ハイブリッド」という構成を乗用車の主力技術にはせず、 大型SUVや高級車などの一部モデルに限定して採用しているのです。
第3章:採用事例と各社の戦略
これまで見てきたように、ディーゼルハイブリッドは技術的にもコスト的にも不利な要素を多く抱えています。 それでも一部のメーカーは、このシステムをあえて採用しています。 ここでは、その代表的な事例を国産・輸入車・商用車の3つの視点から見ていきましょう。
1. 国産メーカーの採用例:マツダCX-60/CX-80
現在、日本国内で正規販売されているディーゼルハイブリッド乗用車は、マツダCX-60とCX-80のみです。 両モデルには3.3L直列6気筒ディーゼルターボに、48Vマイルドハイブリッドシステム(e-SKYACTIV D M-HYBRID)が組み合わされています。
このシステムは、発進や低速走行時にモーターがエンジンをアシストし、燃費と静粛性を高める構成。 とはいえ、マイルドハイブリッドであるため、モーターだけでのEV走行はできません。 主な狙いは「加速時のスムーズさ」と「高トルクディーゼルの振動低減」にあります。
実際、CX-60のディーゼルハイブリッドは非ハイブリッド仕様より約100kg重いものの、 16.3馬力・153Nmのモーターアシストで力強い加速を実現。 価格差はおよそ50万円以上ありますが、“静かで力強い走り”を求めるユーザーに支持されています。
2. 輸入車メーカーの採用例:欧州勢の48V戦略
一方、ヨーロッパでは48Vマイルドハイブリッドディーゼルが広く採用されています。 特にメルセデス・ベンツやBMW、アウディといったメーカーが積極的に導入しており、 環境規制の厳しい欧州において、排気量を抑えながら性能を維持する手段として活用されています。
- メルセデス・ベンツ:Cクラス、Eクラス、GLC、Sクラスなどの「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」搭載モデル
- BMW:X1、X3、5シリーズなどの「20d」系ディーゼルに採用
- Audi:A6、Q5、Q7などに「40TDI」「50TDI」として採用
これらのモデルはいずれもDセグメント以上の比較的大型な車種で、 ディーゼル+マイルドハイブリッドの組み合わせによって、 燃費性能・排出ガス性能・乗り心地を高次元で両立しています。 大型車ではスペースや重量の制約が少ないため、この組み合わせが最も理にかなっていると言えるでしょう。
3. 商用車での採用:日野プロフィア
商用車の分野では、ハイブリッド化のメリットが限定的ですが、例外的に採用されているモデルがあります。 それが日野プロフィア・ハイブリッドです。
25トンクラスの大型トラックであるプロフィアでは、減速時のエネルギーを回収して発電し、 加速時のモーターアシストに利用するシステムを採用。 これにより、市街地よりも高速走行が多い大型車でも、燃費と排出ガスの改善が図られています。

つまり、ディーゼルハイブリッドは「燃費改善」だけでなく、 大トルクをより効率よく制御するための技術として商用車分野でも活用され始めているのです。
第4章:今後の動向と市場展望
ここまで見てきたように、ディーゼルハイブリッドは構造的に不利な要素が多く、 コストやスペース、重量面で課題を抱えています。 しかし、すべてがネガティブというわけではありません。 近年の自動車業界の流れを踏まえると、特定の領域では再評価の兆しも見えてきています。
1. 欧州を中心に拡大する「マイルドハイブリッドディーゼル」
欧州市場では環境規制が非常に厳しく、CO₂排出量を1g単位で抑えることが求められています。 その中で注目されているのが、48Vシステムを使ったマイルドハイブリッドディーゼルです。 この方式はモーター走行を行わず、あくまで“アシスト”に徹することで、コストを抑えながら効率を上げることができます。
とくに大型SUVや高級セダンなど、もともと車両価格が高く重量のあるモデルでは、 このシステムの効果が明確に現れやすく、ユーザーも追加コストを受け入れやすい傾向にあります。 そのため、メルセデスやBMWなどは今後もディーゼル+マイルドハイブリッドをラインナップの柱に据えると見られています。
2. 日本市場では「大型SUV中心」に展開が継続
日本では排ガス規制の厳しさやユーザー層の違いから、小型車にディーゼルハイブリッドを導入するのは難しい状況です。 しかし、マツダCX-60やCX-80のように、車体サイズに余裕があり、高速走行や長距離ドライブを前提としたモデルでは、 静粛性・トルク感・高速燃費の3点でディーゼルハイブリッドのメリットがしっかり生きています。
また、SUVやクロスオーバーといった「やや重めの車体」にとって、 ディーゼル+マイルドハイブリッドはちょうど良いバランスを持つパワートレインとも言えます。 今後もマツダを中心に、ニッチながら一定の需要を保ちながら進化していく可能性が高いでしょう。
3. 次世代技術との関係:BEV・e-Fuel・水素エンジンとの共存
一方で、自動車業界全体の潮流は電動化(BEV)へとシフトしています。 そのため、完全なハイブリッドシステムよりも、モーターアシストを補助的に使う「マイルドハイブリッド」が 今後の過渡期技術として重視される見込みです。
さらに欧州では、ディーゼルエンジンの燃焼に再生可能燃料(e-Fuel)を組み合わせる動きも進んでおり、 「クリーンディーゼル+電動アシスト」という構成が中期的な解として再び注目されています。 また、日本では水素を燃料とする水素エンジンも並行開発が進んでおり、 ディーゼルハイブリッドのノウハウがこうした技術にも活かされていく可能性があります。
4. まとめ:大型車を中心に“生き残るハイブリッド”へ
ディーゼルハイブリッドは、万人向けの技術ではありません。 しかし、車体が大きく重量のある車種や、長距離走行が多いユーザーにとっては、 依然として最も効率的で現実的な選択肢のひとつです。

つまり、今後この技術は「マス市場ではなく、特定層向けの高効率パワートレイン」として定着していくでしょう。 欧州メーカーが推進する48Vマイルドハイブリッド化の流れは、その象徴的な動きとも言えます。
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まとめ ― ディーゼルハイブリッドは“ニッチで生き残る技術”
ディーゼルハイブリッドは、理論上は非常に魅力的な組み合わせでした。 ディーゼルの高トルク・低燃費性能と、ハイブリッドの効率的なエネルギー回収を併せ持つ―― まさに「理想的な省エネカー」に見えます。
しかし現実には、ディーゼルエンジンとモーターの特性が重なり合うこと、 さらにコスト・重量・スペースの問題が大きく影響し、普及には至りませんでした。 メーカーにとってもユーザーにとっても「投資に見合うリターンが得にくい」技術だったのです。
とはいえ、マツダのように走りと静粛性を両立させたいメーカーや、 メルセデス・BMWのように排出ガス規制をクリアしつつ性能を維持したいメーカーにとって、 ディーゼルハイブリッドは今も現実的な選択肢であり続けています。
これからの時代は、完全電動化(BEV)への過渡期。 その中で、マイルドハイブリッドのような「小さな電動化技術」が増えていくでしょう。 ディーゼルハイブリッドは、大型SUVや高級車を中心に、静かで力強い“プレミアムな走り”を支える技術として残っていくはずです。
つまり、ディーゼルハイブリッドは“誰にでも合う万能選手”ではなく、 「走りにこだわる人」「長距離を快適に走りたい人」にとっての特化型パワートレイン。 燃費だけでなく、トルク感や走行フィールを重視するドライバーには、今後も魅力的な存在であり続けるでしょう。
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最後に一言でまとめるなら―― ディーゼルハイブリッドは“効率を極めた個性派”。 万人向けではないけれど、ハマる人には唯一無二の存在です。 もしあなたが「走りと燃費のどちらも譲れない」と考えているなら、 ディーゼルハイブリッドの世界を一度体験してみる価値は十分にあります。
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よくある質問
- Qディーゼルハイブリッドは燃費的に有利ではないの?
- A
理論上は有利に見えますが、車両重量の増加や装置の複雑化により、 実際の燃費差はガソリンハイブリッドとほとんど変わりません。 燃料代の節約目的だけで選ぶと、コスト的にメリットが出にくいのが現実です。
- Qメンテナンス費用は高くなる?
- A
はい。ディーゼルハイブリッド車は排ガス浄化装置(DPF・SCR)+ハイブリッドバッテリーを搭載しているため、 メンテナンス項目が増えます。 特に短距離走行が多いユーザーではDPFが詰まりやすく、通常のハイブリッドより整備コストは高くなります。
- Q今後、日本でもディーゼルハイブリッド車は増える?
- A
小型車では難しいですが、大型SUVや高級車では今後も採用が続くと見られています。 欧州メーカーを中心に、48Vマイルドハイブリッドを活用した「高効率ディーゼル」の開発は進行中です。 つまり、主流にはならないものの、一定の市場を維持しながら進化を続けていく可能性があります。






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