はじめに|なぜ今、水素エンジンに注目が集まっているのか?
最近よく耳にする「水素エンジン」。なんとなく“エコっぽい”というイメージはあるけど、「それってEV(電気自動車)と何が違うの?」と思っている方も多いのではないでしょうか?
実はこの水素エンジン、従来のガソリン車と同じように“エンジン”で車を動かすという仕組みを残しながらも、排出するCO2は限りなくゼロに近いという、まさに“いいとこ取り”のような存在なんです。
しかも、水素エンジンは**「エンジン音」や「振動」といったドライバーが感じる“車らしさ”を残せる**のが大きな魅力。EVやFCV(燃料電池車)のように静かでスムーズすぎる乗り味に少し物足りなさを感じていた方には、ピッタリの技術とも言えます。
また、すでに持っている内燃機関の技術や生産ラインを活かせるという点でも、自動車メーカーにとっては大きなメリットがあります。これは、ただの「未来のクルマ」ではなく、**内燃機関の“延命”ではなく“再出発”**という意味でも注目されているのです。
脱炭素社会に向けてさまざまなアプローチが模索される中、水素エンジンは**“EVだけが正解じゃない”という新しい価値観**を提供してくれています。
この記事では、そんな水素エンジンの仕組みや特長、抱えている課題、そして自動車メーカーの最新の取り組みまで、わかりやすく解説していきます。
ぜひ最後まで読んで、未来のクルマ選びの参考にしてみてくださいね!
1. 水素とは何か?そして水素エンジンの基本構造とは?
🔹水素って、どんな燃料?
水素は、宇宙で一番たくさん存在する元素です。地球上でも水(H₂O)や化合物の形で身近にありますが、単体の水素ガスとして自然界にそのまま存在することはありません。つまり、燃料として使うためには「作り出す」必要があるんですね。
水素を作る方法は大きく2つあります。
- 改質法(リフォーミング)
石油や天然ガスなどの化石燃料から水素を取り出す方法。今の主流ですが、作る過程でCO₂が出てしまいます。 - 電解法(電気分解)
水に電気を流して水素と酸素に分ける方法。再生可能エネルギーで電気を作れば、CO₂フリーのクリーンな水素になります。
将来はこの電解法が中心になることが期待されています。
🔹水素エンジンってどんな仕組み?
水素エンジンは、一言でいえば**「ガソリンの代わりに水素を燃やす内燃機関」**です。
つまり、エンジンの中で水素と空気を混ぜて燃やし、その爆発力でピストンを動かし、車輪を回すという仕組み。
この点が、電気でモーターを回すEVや、燃料電池で発電してモーターを動かすFCVと大きく違うポイントです。
「水素=電気自動車」と思っている方も多いですが、水素エンジンは**“音も振動もある”エンジン車**なんです!
🔹ガソリンエンジンと何が違うの?
意外かもしれませんが、水素エンジンとガソリンエンジンの基本構造はほぼ同じです。だから、既存のエンジンを水素仕様に改造することもできます。
ただし、いくつかの違いはあります:
- 燃料噴射の仕組み:水素は気体なので「ガスインジェクター」が必要
- 燃料タンクの設計:高圧ガスを安全に蓄えるため、特別なタンクが必要
- 部品の素材:水素は金属をもろくする特性があるので、耐性素材を使用

こうした違いはありますが、「エンジンで走る楽しさ」はそのままに、クリーンな走りを実現できるのが最大の魅力です。
2. ガソリンエンジンとどう違う?水素エンジンの仕組みと構造的特徴
水素エンジンの基本構造はガソリンエンジンとよく似ているとはいえ、燃料が「水素」というだけで、実は中身の細かいところには大きな違いがあります。
ここでは、主な違いや技術的なポイントをわかりやすく紹介します!
🔸燃料噴射システムの違い
ガソリンエンジンでは、液体燃料を細かく霧状にして燃焼室に噴射します。
でも、水素は気体なので、ガス用のインジェクターが必要になります。
しかも水素は、ガソリンのような潤滑性がないため、パーツがすり減りやすいんです。
そのため、インジェクターの内側に特殊なメッキ加工を施したり、バルブ周辺の耐摩耗対策も欠かせません。
🔸燃料ラインと部品素材も重要!
水素にはもう一つ大きな特徴が。それは「水素脆性(ぜいせい)」という性質。
これは、水素が金属に入り込むことで、金属をもろくしてしまう現象です。
つまり、普通の金属をそのまま使うとヒビが入ったり破損の原因になってしまうんですね。
このため、水素を扱う部分にはステンレスや特殊合金など、水素に強い素材が使われています。
🔸水素タンクは超高性能!その中身は?
水素はとにかく密度が低く、すぐに拡散しやすい気体です。
だからたくさん積むには、高圧でギュッと圧縮してタンクに詰める必要があります。
- 一般的な水素タンクでは、約700気圧という超高圧で充填
- タンクは三層構造になっていて、
- 表面:ガラス繊維強化プラスチック
- 中層:炭素繊維強化プラスチック
- 内層:プラスチックライナー
このような構造で、水素の漏れを防ぎ、安全性を確保しています。
ただし、タンク1本で約200万円と、かなり高額です。
🔸液体水素という新たなアプローチ
最近は、**気体ではなく「液体の水素」**を使う動きも始まっています。
-253℃という極低温まで冷やすと水素は液体になり、体積は気体の約1/800になります!
このメリットはとにかく大きくて…
- 1回の充填でたくさん走れる(航続距離が約1.7倍)
- 燃料が最後まで使い切れる(残量が減っても圧力が保たれる)
- 水素ステーションの敷地面積が1/4になる可能性も!
ただし、液体水素を扱うには、魔法瓶のような真空二重構造のタンクや極低温に耐える特殊なポンプが必要になります。
🔸「エンジンらしさ」を残しながら、クリーンに走る!
何よりも魅力的なのは、内燃機関ならではの“音”や“振動”を楽しめるという点。
EVの静かさが物足りない…という人には、まさに理想の選択肢かもしれません。

水素エンジンは、これまで培ってきたエンジン技術や製造ノウハウを活かしながら、CO₂をほぼ出さずに走れるという、まさに“次世代のエンジン”なんです。
3. 水素エンジンが抱える5つの課題
水素エンジンは夢のような技術に見えるかもしれませんが、現実的にはまだ多くの課題を抱えています。
ここでは、特に注目すべき5つのポイントをわかりやすく解説していきます。
🔸① エネルギー効率の悪さ
水素は確かにクリーンな燃料ですが、作るためにたくさんのエネルギーが必要です。
特に主流となっている「改質法」は、石油や天然ガスを燃やして水素を作る方法で、製造段階でCO₂を出してしまうのが難点…。
一方で「電気分解(水を電気で分解して水素を取り出す)」という方法もありますが、こちらはまだコストが高く、大量生産には不向きとされています。
つまり、「走るときにCO₂ゼロでも、作る段階では排出している」というジレンマがあるわけです。
🔸② プレイイグニッション(自然着火)のリスク
水素は、なんとガソリンの7~8倍の速さで燃えるという超高反応の燃料。
そのため、ノッキング(異常燃焼)は起きにくい一方で、「プレイイグニッション」が起きやすいという特徴があります。
これは、スパークプラグで火花を飛ばす前に、勝手に燃焼が始まってしまう現象のこと。
水素はわずかな熱でも着火するため、エンジン内部に熱がこもると、意図しないタイミングで自然発火してしまうのです。
ただし、液体水素(-253℃)を使えば燃料温度が低くなるため、この問題は大きく改善されるとされています。
🔸③ 航続距離と燃費の課題
水素は軽くて拡散しやすい分、たくさん積まないと長く走れないのが現状です。
気体水素タンクでは航続距離が短く、燃費面でもガソリン車に劣っていました。
でも、液体水素の登場でこの問題は大きく前進しています。
現在では、従来比で約1.7倍の航続距離を実現しており、最終的には約2倍を目指して開発が進んでいます。
🔸④ ノックス(NOx)という排出ガスの問題
「水しか出ないって聞いたけど…?」と思われるかもしれませんが、実は水素エンジンでも有害物質「NOx(窒素酸化物)」は発生します。
これは、空気中の窒素と酸素が高温で反応してできるもので、ディーゼル車の問題としてもよく知られています。
今後は、ディーゼルと同じように尿素水(AdBlue)を使ったSCR触媒の導入や、燃焼制御によってNOxの発生そのものを減らす技術開発が求められます。
🔸⑤ 高コストなインフラ整備
最後にして最大のネックが、コストの問題です。
水素エンジン車を走らせるには、まず水素ステーションが必要ですが、これが非常に高額。
- ステーションの建設費:最低でも約4億円(ガソリンスタンドの約8倍)
- 年間維持費:約3,000〜4,000万円
- さらに充填には資格を持った専門スタッフも必要!
また、車両側のコストも安くはありません。水素タンクや特殊部品のコストが高く、市販されてもガソリン車より高額になる可能性が大です。
ただし、液体水素の活用によってステーションの土地面積を1/4に縮小できる可能性もあり、今後の技術進化でコストダウンも期待されています。

このように、水素エンジンにはまだ超えなければならない壁がいくつもありますが、技術の進歩によって着実に一歩ずつ前進しているのも事実です。
4. トヨタやBMWも参戦!メーカー各社の最新動向
水素エンジンの可能性にいち早く着目し、実際に研究や実用化に向けて動き出している自動車メーカーも増えてきています。
ここでは、日本をはじめ世界の代表的な取り組みを紹介します。
🔸1970年代からスタートしていた日本の挑戦
水素エンジンの研究自体は意外と古く、日本では1974年に「武蔵1号」が公道を走行しています。これは、武蔵工業大学(現・東京都市大学)による水素エンジン車で、当時から技術的な実用性が注目されていました。
その後も日本では地道に開発が続けられ、徐々に自動車メーカーも参入するようになっていきます。
🔸マツダのロータリー水素エンジン
1990年代に注目を集めたのが、マツダのロータリーエンジン×水素燃料の組み合わせ。
1991年にはコンセプトカー「HR-X」が登場し、2006年には実際に広島県や広島市にリース車として導入された実績もあります。
マツダらしい独自路線で、水素とロータリーの可能性を追求してきました。
🔸BMWの「ハイドロゲン7」
ドイツのBMWも、水素エンジンにいち早く注目した企業の一つです。
2006年には、**7シリーズをベースにした「ハイドロゲン7」**を100台限定で販売。
こちらはV12エンジンで水素とガソリンの両方に対応するという、革新的なモデルでした。現在はトラック向けの水素エンジン開発に力を入れており、2030年までに150カ所の水素ステーション建設を目指すなど、大型商用車の脱炭素化を視野に入れた取り組みを進めています。
🔸トヨタのレース参戦と液体水素への挑戦
最近もっとも話題になっているのが、トヨタの水素エンジンによるレース参戦です。
2021年からは、既存のガソリン車をベースにした水素エンジン車で耐久レースに参戦。さらに2023年からは、-253℃の液体水素を使った車両で挑戦し、航続距離を飛躍的に向上させました。
この活動は「技術実証」の意味合いが強く、レースという極限環境でトラブルを洗い出し、改良を重ねているのがポイントです。
また、トヨタは水素エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせた次世代型のパワートレインにも取り組んでおり、今後の市販化にも期待が集まります。
🔸その他のメーカーの動き
ある国産メーカーでは、V8エンジンをベースにした水素エンジンの試作を行うなど、高性能エンジンへの転用も模索されています。

水素エンジンはEVと違って、内燃機関のノウハウをそのまま活かせるのが最大の魅力。だからこそ、各社が「技術の延命」ではなく「進化」として、次のステージへ踏み出しているのです。
5. 水素エンジンの将来性|内燃機関は終わらない?
「これからのクルマは全部EVになるんでしょ?」
そんな空気が強まる中、あえて**“内燃機関”という古くて新しい技術に未来を託す動き**が注目を集めています。それが、水素エンジンです。
🔸エンジンならではの魅力を残せる
水素エンジンの最大の魅力は、なんといっても「エンジンらしさをそのまま楽しめる」こと。
- エンジンを回したときの音や振動
- アクセルを踏み込んだときのレスポンスや高揚感
- ギアチェンジのタイミングや、エンジン回転数の“美味しいところ”を使う感覚
こういった“運転の楽しさ”は、モーター駆動のEVではなかなか味わえないものです。
だからこそ、運転そのものを楽しみたいドライバーや、自動車ファンにとって、水素エンジンは感性に訴えかける選択肢として期待されています。
🔸「捨てるには惜しい」内燃機関のノウハウ
世界中の自動車メーカーは、何十年もかけて内燃機関を進化させてきました。
それは、燃焼効率を高め、排ガスを減らし、耐久性を上げるという、まさに職人芸の結晶です。
水素エンジンは、その膨大な知見や既存の生産ライン、部品供給網を活かせるという意味でも、非常に現実的なアプローチです。
これにより、EVでは活かせないエンジン開発部門や整備業界のスキルも引き継がれ、産業構造を維持しながら脱炭素化に貢献できるという側面もあるのです。
🔸EVだけが正解じゃない世界へ
もちろん、EVやFCVも重要な技術です。でも、それだけに頼るのではなく、「多様な選択肢を持つこと」がこれからの時代には大切です。
- バッテリーの原料が限られるEV
- 高コストなFCVインフラ
- 長距離・高出力が求められる業務用車両やレース分野
そうした用途では、むしろ水素エンジンの方が相性が良いケースもあるんです。

つまり水素エンジンは、「エンジンの復活」ではなく「エンジンの進化形」。
音も手応えもある“走る楽しさ”を残しながら、脱炭素を実現するための第三の道として、今まさに再評価されているのです。
まとめ|水素エンジンが開く、もう一つのカーボンニュートラルの道
水素エンジンはまだ「これから」の技術です。
でも、この記事で紹介したように、すでに多くの技術的課題がひとつずつクリアされ始めており、夢物語ではなく、現実の選択肢としての存在感を増しています。
EVやFCVが台頭する中で、「エンジン=古いもの」と思われがちですが、水素を燃料にすることで排出ガスの課題を克服し、環境に優しい“内燃機関”へと進化できる可能性が見えてきました。
- ガソリンに代わるクリーンな燃料としての水素
- 構造を活かせる内燃機関の技術
- “音”や“手応え”を残せるドライビングフィール
- レースや商用車での実用性の高さ
これらすべてが、水素エンジンの**「まだ終わっていない内燃機関」**としての価値を物語っています。
もちろん、インフラ整備やコストの問題など、超えるべきハードルはあります。
でも、それはかつてEVが抱えていた課題と似たようなもので、技術革新と社会的ニーズによって少しずつ乗り越えられていくと考えられます。
今後のクルマ選びでは、「EV or ガソリン」だけでなく、「水素エンジン」という選択肢も視野に入れる時代が来るかもしれません。
“内燃機関が終わる”のではなく、新しいかたちで続いていく未来。
水素エンジンは、その希望をつなぐ技術として、これからも目が離せません。
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よくある質問
- Q水素エンジンと燃料電池車(FCV)は何が違うの?
- A
水素エンジンは、水素を「燃やして」ピストンを動かすエンジン車です。
一方、燃料電池車(FCV)は、水素と酸素を反応させて電気を作り、その電気でモーターを回すクルマ。
つまり、同じ水素を使っていても、エンジンかモーターかという違いがあります。
- Q水素エンジン車はいつから買えるの?
- A
2025年現在では、まだ一般向けの市販モデルは登場していません。
トヨタなどがレース用車両や試験車として実証実験を進めている段階です。
ただし、液体水素などの技術が進んでおり、今後数年以内に一部の商用車や特定ルートでの実用化が期待されています。
- Q水素エンジンって本当に安全なの?
- A
はい、安全性はしっかり考えられています。
水素は確かに爆発性のあるガスですが、航空機やロケット開発で培われた高圧ガス管理の技術が自動車にも応用されています。また、最新の水素タンクは三層構造で高強度かつ漏れにくく設計されており、衝突時や火災時にも安全性が確保されるようになっています。






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