【はじめに】|“変形するエンジン”って本当にあるの?
「エンジンが“変形”するってどういうこと?」
そんな風に思った方、正解です。実は、走行中にエンジン内部の構造が変化するという、まるでSFのような技術が現実になっているんです。
この技術の名前は「可変圧縮比エンジン(VCR:Variable Compression Ratio)」。
2016年、日産が世界で初めてこの技術の量産化に成功し、2018年には市販車に搭載されるまでになりました。
では、なぜ「圧縮比」を変える必要があるのでしょうか?
答えは、「低燃費と高出力の両立」という、従来のエンジンでは相反していた2つの性能を、一つのエンジンで実現するためです。
たとえば、街中でちょこちょこ走るときは燃費を良くしたいですよね。でも、高速道路や山道では力強い加速も欲しい…。
そんなわがままを叶えるのが、この“変形する”エンジンなんです。
この記事では、そんな可変圧縮比エンジンの仕組み・メリット・搭載車・歴史まで、徹底的にわかりやすく解説していきます。
車好きはもちろん、最近のエンジン事情を知りたいという方にもピッタリの内容です!
【1. 圧縮比とは?|なぜ燃費やパワーに関係するのか】
エンジンの「圧縮比」って聞いたことはありますか?
これは、エンジンの中で空気と燃料の混合気をどれだけギュッと押し縮めるかを示す数値です。
ちょっと例え話をしましょう。
あなたが自転車の空気入れを思いっきり押し込んだとき、中の空気は圧縮されてギュッと詰まりますよね?
それと同じで、エンジンでも混合気をギュッと押し込むことで、爆発の力が強くなってパワーが出るんです。
▶ 圧縮比が高いとどうなる?
圧縮比が高いほど、以下のようなメリットがあります。
- パワーアップ:同じ量の燃料からより強い爆発力が得られる
- 燃費向上:エネルギー効率が高くなる
たとえば、「11:1」の圧縮比なら、吸い込んだ混合気を11分の1までギュッと圧縮していることになります。
▶ でも、圧縮しすぎると問題も…
ただし、いいことばかりではありません。
圧縮しすぎると混合気の温度が上がりすぎて、意図しないタイミングで勝手に燃えちゃうことがあるんです。
この現象は「ノッキング」と呼ばれ、エンジンにダメージを与える原因になります。

ノッキングを防ぐために、ターボエンジンではあえて圧縮比を低くするなどの工夫がされています。
でもそうすると今度は低速時の燃費が悪くなる…。
これが、従来のエンジンが抱えていたジレンマなんです。
【2. ターボエンジンのジレンマ|低燃費と高出力は両立できる?】
エンジンを語るうえで、近年主流となっている**「ターボエンジン」**は避けて通れません。
「小さいエンジンでも力持ちにできる!」ということで、多くの車に採用されています。
でも実は、**“燃費が悪くなる場面がある”**ってご存じですか?
▶ ターボってどうやってパワーを出しているの?
ターボエンジンは、排気ガスの力でタービンを回し、その風圧で通常よりも多くの空気をエンジンに押し込むことで、爆発力=パワーを上げています。
つまり、本来の排気量以上の力を発揮できる仕組みなんです。
これによって、小さな排気量でもV6並の出力が出せるので、「ダウンサイジングターボ」として人気を集めてきました。
▶ でも…圧縮比が低いから燃費が落ちる?
ここで問題なのが**“圧縮比の制限”**です。
先ほど解説したように、混合気を強く圧縮すると温度が上がりすぎて「ノッキング」を起こす可能性があります。
ターボエンジンでは空気を強制的に押し込むので、すでに温度が高い状態から圧縮が始まるんです。
そのため、ターボエンジンではノッキングを避けるために圧縮比を下げざるを得ないのです。
▶ ターボが効かない場面ではどうなる?
ターボが本領発揮するのは、高速道路でグッとアクセルを踏み込んだとき。
でも、街中や信号待ちからの発進など“低負荷”のときは、ほぼNA(自然吸気)状態になっています。
このとき、ターボの恩恵はなく、圧縮比も低いので…
📉パワーが出ない
📉燃費も良くない
という、本末転倒な状態になってしまうんです。

この問題を一発で解決する技術が…そう、次に紹介する**「可変圧縮比エンジン」**なんです!
【3. VC-Engineの仕組み|ピストンの位置が変わる!?】
燃費とパワーの両立なんてムリだと思っていたところに、登場したのが**日産の可変圧縮比エンジン「VC-Engine」**です。
なんとこのエンジン、**走っている最中に“圧縮比を物理的に変える”**という、これまでの常識を覆す構造を持っています。
え?どうやって?って思いますよね。順番に見ていきましょう。
▶ 通常のエンジンはピストンが固定の動き
一般的なエンジンでは、ピストンはコンロッドを介してクランクシャフトに繋がっていて、ピストンの上下位置は基本的に変えられません。
このため、圧縮比も固定で、燃費を取るか、パワーを取るかのどちらかしか選べませんでした。
▶ VC-Engineは“ピストンの上死点”を変えられる!
VC-Engineのすごいところは、ピストンがどこまで上がるか(=上死点)をリアルタイムで変えられること。
これによって、燃焼室の容積が変わり、圧縮比が8:1〜14:1の間でシームレスに可変します。
その動きのカギとなるのが、マルチリンク機構です。
▶ 仕組みをざっくり解説!マルチリンク機構の動き
- 小型モーターがハーモニックドライブを回す
- ハーモニックドライブがアクチュエーターアームを動かす
- アームがコントロールシャフトを回転させる
- コントロールリンク → Lリンク → ピストンの上下位置を変える
これだけ聞くと複雑に思えますが、やってることは「ピストンをちょっとだけ上下にズラす」ということなんです。
▶ 圧縮比を使い分けて最適化!
| 圧縮比 | 状態 | 効果 |
|---|---|---|
| 低圧縮(8:1) | 高速・高負荷時 | パワー優先、ノッキング回避 |
| 高圧縮(14:1) | 低速・低負荷時 | 燃費優先、効率UP |
つまり、**アクセルの踏み具合や走行条件に応じて、エンジンが“勝手に最適な姿に変形してくれる”**というわけです。
まるで、走行シーンに合わせてスーパーヒーローがフォームチェンジするような感じですね。
▶ 見える化もされている!
しかもこのVC-Engine、実際に車のメーター上で「今の圧縮比」が確認できるんです!
エンジンの状態が見えるって、ちょっとワクワクしますよね。

この革新的な技術が、どんな車に搭載されているのか?
次の章で詳しく紹介していきます!
【4. 日産VCターボの特徴と搭載車】
「変形するエンジン」こと**VC-Engine(可変圧縮比エンジン)**を実際に搭載した市販車が、日産からすでに販売されているって知っていましたか?
この章では、そんな**“世界初の実用化”を果たした日産VCターボ**の特徴と、どんな車に積まれているのかを見ていきましょう!
▶ 第一世代:2.0Lターボ「KR20DDET」
2018年に登場したインフィニティQX50(海外モデル)に初めて搭載されたのが、2.0L直列4気筒の「KR20DDET」というエンジン。
このエンジンは、従来使われていた3.5L V6エンジンを置き換える目的で開発されました。
にもかかわらず、
- パワーはしっかりV6相当
- 燃費は最大27%も向上
- トルクはターボでしっかり確保
と、まさにダウンサイジング+ハイテクの理想形なんです。
このエンジンは以下の車種に搭載されています:
✅ インフィニティ QX50
✅ インフィニティ QX55
✅ 日産 アルティマ(北米)
▶ 第二世代:1.5Lターボ「KR15DDT」
2022年以降には、さらに進化した1.5Lの3気筒ターボエンジン「KR15DDT」が登場。
主にe-POWER車の発電用エンジンとして活躍しています。
「発電用なのにそんなに凝った仕組みにするの!?」と思うかもしれませんが、
発電エンジンだからこそ、どんな負荷でも効率よく動けることが重要なんです。
このエンジンは以下の車に搭載:
✅ 日産 エクストレイル(新型)
✅ 日産 ローグ(北米版エクストレイル)
▶ 直噴とポート噴射の“いいとこ取り”
VCターボでは、日産初となる**「直噴+ポート噴射」の併用システム**を採用。
これによって、エンジンの燃焼効率を全回転域で最適化しています。
| 状態 | 使用する燃料噴射方式 |
|---|---|
| 低負荷時 | ポート噴射(燃費優先) |
| 高負荷時 | 直噴(ノッキング防止) |
| 両方使う | 併用(パワーと効率の両立) |

つまり、いつでも“ちょうどいい燃え方”をしてくれるというわけです。
【5. メリットとデメリットまとめ】
ここまで読むと「可変圧縮比エンジンって最強じゃん!」って思うかもしれません。
でも、もちろんメリットだけでなく、ちゃんと弱点や課題もあるんです。
この章では、VC-Engineの良いところ・惜しいところをまとめてチェックしておきましょう!
✅ メリット①|摩擦抵抗がとにかく少ない!
VC-Engineでは、ピストンをほぼ垂直に近い角度で上下させるリンク構造を採用しています。
これにより、ピストンがシリンダー壁に斜めに押し付けられる力が少なくなり、摩擦抵抗が最大75%も低減されているんです!
つまり、エネルギー効率がグッとアップして燃費が良くなるというわけ。
✅ メリット②|バランサーシャフトが不要!
4気筒や3気筒エンジンには、振動を抑える「バランサーシャフト」がよく使われますが、これって回すだけでロスが出るんですよね。
VC-Engineは、複雑なリンク機構そのものが振動を打ち消す効果を持っているため、バランサーシャフトが不要。
そのぶん、軽量化・省エネ・静粛性UPと、いいことづくめです!
✅ メリット③|高回転でもリアルタイムに圧縮比が変化!
「高回転域では間に合わないのでは?」と疑問に思うかもしれませんが、
VC-Engineではリアルタイムに圧縮比を無段階で調整できる構造になっています。
アクセルをグッと踏んだら、瞬時に低圧縮モード。
ゆったり流しているときは、すぐに高圧縮モードに切り替わります。
“頭のいいエンジン”って感じですね。
❌ デメリット①|コストが高い
複雑なリンク機構や精密な可動部品が必要なので、どうしても部品点数や加工コストが上がる傾向にあります。
とくに「Lリンク」と呼ばれる可変圧縮の要となる部品は、硬くて加工が難しい高精度パーツ。
製造できる工場も限られており、量産化には高い技術力が求められます。
❌ デメリット②|製造環境にシビア
このVC-Engine、“ガラス部品”と呼ばれるほど繊細な構造で、製造工程にも気を使います。
- クリーンな空間での組み立て
- 微細なゴミの排除
- 温度管理による膨張防止
など、まるでスマホの基板を作るようなレベルの慎重さが必要。
このため、量産効率は従来のエンジンよりやや劣るのが現実です。

とはいえ、それでも「可変圧縮比」という唯一無二の価値を考えると、
この技術が将来的にもっと広がる可能性は大いにあります!
【6. 可変圧縮比エンジンの歴史】
可変圧縮比エンジン(VCRエンジン)は、日産が世界で初めて量産化に成功したことで一気に注目を浴びましたが、
実はこのアイデア自体、なんと100年以上も前から存在していたんです!
この章では、そんな「幻の技術」が現実になるまでの長い歴史を、簡単にたどってみましょう。
🏁 始まりは1920年代|リカルドの“夢”
最初に可変圧縮比のコンセプトを提唱したのは、イギリスの技術者ハリー・リカルド。
1920年代のことです。
彼は、**ノッキング対策として圧縮比を変えられたら良いのでは?**と考えました。
でも当時は、金属加工や精密部品の技術が追いついておらず、夢のまま終わってしまったのです。
🛠 技術の進歩と再挑戦(1990〜2000年代)
時は流れ、エンジンの高効率化が求められるようになると、再び可変圧縮比のアイデアが注目され始めます。
- 1999年|ヤマハ
→ 2ストディーゼルエンジンで、燃焼室の形状を変えて圧縮比を調整する「SDスーパーディーゼル」を開発 - 2000年代初頭|サーブ(SAAB)
→ シリンダーヘッドを動かして圧縮比を調整する実験用エンジン「SVC(Saab Variable Compression)」を発表
どれもアイデアとしては魅力的でしたが、構造が複雑すぎたり、量産に向かないなどの課題から市販化には至りませんでした。
🔧 共同研究からのブレイクスルー
- 2008年|VCR Automotive Technologies設立
→ 日産、ボルボ、PSA(プジョー・シトロエン)、ルノーなどが参加し、リカルド社主導で共同研究を開始。
このプロジェクトが、後の日産「VC-Engine」誕生のきっかけになります。
🚗 ついに実用化!日産の快挙
- 2016年
日産がついにVCターボエンジンの量産技術を確立。 - 2018年
インフィニティQX50に「KR20DDET」エンジンとして世界初搭載!
市販車での初導入となりました。 - 2022年〜
次世代e-POWER車に**1.5L 3気筒ターボ「KR15DDT」**を搭載。
発電用エンジンとしても可変圧縮比が活躍中です。
✨ 忘れられた技術から“次の主役”へ
100年近く忘れられていたアイデアが、
日産の手によって量産技術として復活し、いまでは世界が注目する技術となりました。

「昔の発想が、いまの技術で花開く」って、なんだかロマンがありますよね。
【7. まとめ|可変圧縮比エンジンは“究極のマルチプレイヤー”】
燃費のいい車が欲しい。でも、加速力も妥協したくない。
そんな“わがまま”を、一台のエンジンで全部叶えてくれるのが――そう、**可変圧縮比エンジン(VC-Engine)**です。
✅ 燃費モードにも
✅ パワーモードにも
✅ しかもリアルタイムに切り替え可能!
それを可能にしているのが、ピストンの位置を変えるリンク機構の天才的な動き。
まさに「頭のいいエンジン」「変形するエンジン」と呼ぶにふさわしい革新です。
▶ 技術だけじゃない、完成度も高い!
VC-Engineは、アイデア先行の実験技術ではありません。
- インフィニティやエクストレイルなどの市販車に搭載済み
- 実際に燃費向上とパワー両立を実現
- リアルタイムで圧縮比を制御し、状況に最適な燃焼を実現
と、すでに“実績あるハイテク”として市場で活躍しています。
▶ これからのエンジンの生き残り方
近年はEV(電気自動車)ばかりが話題になりがちですが、
ガソリンエンジンも進化を続けていることを、VC-Engineは証明してくれています。
特にハイブリッドやシリーズハイブリッド(e-POWER)との相性は抜群で、
「まだまだ内燃機関は終わらない」と思わせてくれる存在です。
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よくある質問
- Q圧縮比が変わると、なぜ燃費が良くなるの?
- A
混合気をより効率的に燃焼させられるからです。
圧縮比が高いほど、空気と燃料の混合気をギュッと押し縮めて、少ない燃料で大きなエネルギーを生み出せます。
VC-Engineは低負荷時にこの「高圧縮比」状態を活かして、燃費性能を最大限に引き出しています。
- Q可変圧縮比エンジンって壊れやすくないの?
- A
構造は複雑ですが、日産は量産化に成功しており、信頼性も高いです。
特別なリンク機構やアクチュエーターを使っていますが、すべて自社内で厳格な精度管理のもとで製造。
すでに北米・日本・欧州などの市販車で使用実績があり、「特別な整備が必要」というわけではありません。






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